まず全体の数を見る。有名企業だけが選択肢ではない
会社の数を実際に数えてみます。東京証券取引所が毎月公開している上場会社一覧(2026年8月31日時点)に、名古屋・福岡・札幌の各取引所だけに上場している会社を足し、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)、外国株を除くと、日本の上場事業会社は4,001社になります。
内訳は、東証だけに載っている会社を含めて東証が3,894社、名証だけの会社が60社、福証だけが31社、札証だけが16社です。就職四季報や就活サイトで名前を見る会社は、この4,001社のさらに一部にすぎません。上場していない会社まで含めれば、対象はもっと広がります。[1] [2] [3] [4]
| 業界 | 上場している事業会社の数 |
|---|---|
| メーカー(機械・電機・自動車・精密) | 776社 |
| IT・通信 | 653社 |
| 人材・コンサル・生活サービス | 590社 |
| 素材・化学・医薬のメーカー | 507社 |
| 小売 | 349社 |
| 商社(総合商社・専門商社) | 309社 |
| 不動産 | 167社 |
| 建設・設備・住宅 | 164社 |
| 食品・飲料・農水産 | 142社 |
| 物流・運輸・交通 | 113社 |
| 証券・保険・その他金融 | 98社 |
| 銀行・信用金庫 | 83社 |
| 電力・ガス・資源 | 34社 |
業界と職種は別のもの。ここを分けると候補が増える
業界は「その会社が何を売っているか」の分類です。職種は「自分が何をする仕事か」の分類です。この2つを混ぜたまま考えると、選択肢がとても狭くなります。
たとえば営業という職種は、IT・通信にも、メーカーにも、商社にも、建設にも、金融にもあります。事務・管理も、企画も、エンジニアも同じです。「営業はやりたくない」と考えている人が、実際に嫌なのは飛び込みの新規開拓であって、既存のお客さまに提案する仕事は嫌ではない、ということもよくあります。
- 同じ「営業」でも、扱うものが自社製品か他社製品かで仕事の中身が違う
- 同じ「エンジニア」でも、自社サービスを作るのか、顧客のシステムを作るのかで違う
- 同じ「事務」でも、注文と請求を回す仕事と、営業の提案資料を作る仕事は別
- 銀行や鉄道のように、一つの会社の中に営業・企画・システム・保守がすべて入っている業界もある
だから業界研究の順番は、「業界を1つ決める」→「その中の会社を探す」ではありません。「自分ができそうな仕事の形をいくつか挙げる」→「その仕事がある業界を数える」→「その中で条件が合う会社を探す」の順です。この順で考えると、名前を知らなかった会社が候補に入ってきます。
業界研究のやり方。公式情報だけで足りる4ステップ
やり方を難しく考える必要はありません。会社が自分で公開している採用ページには、必要なことがほとんど書かれています。順番はこの4つです。
- ① 業界の「入口」を読む:その業界が誰に何を売って成り立っているかを、業界団体か大手企業の説明で1つ読む。5分で足ります
- ② 会社を3社選んで、募集要項を並べる:応募資格、募集職種、採用人数、勤務地、初任給。この5つだけをそろえて比べる
- ③ 採用FAQを読む:学部学科の扱い、既卒の扱い、OB・OG訪問の方針など、不安の答えはたいていここに書いてある
- ④ 自分の条件と突き合わせる:卒業年、住みたい場所、転勤の可否。合わない会社は早めに外す
この4ステップを3社ぶんやると、その業界の相場観がつかめます。10社やる必要はありません。3社で「この業界は自分の条件と合うか」が判断できれば、次の業界に移ります。
学歴が不安なときに、確かめるべきこと
大学名で不安になっているとき、探すべきは「自分の大学が採用実績に載っているか」ではありません。会社が学部・学科や出身校についてどう書いているかです。書き方には段階があります。
| 書かれ方 | 実際の記載例 |
|---|---|
| 出身大学にまで言及している | 「全くありません。文系・理系、さらには出身大学も問いません」(京葉銀行 採用FAQ) |
| 学部・学科を問わないと明記 | 「全ての募集職種について学部・学科不問です」(大塚商会 採用Q&A) |
| 選考基準の欄に明記 | 「学部学科、性別などによる区別は一切ありません」(システナ 募集要項) |
| 出身校の一覧を公開している | 国内大学100校以上を実名で掲載(JBS 日本ビジネスシステムズ 新卒採用募集要項) |
| 評価方法そのものを公開している | 新卒一律年収を撤廃し、独自の「新卒検定」で3つの力を測ると公開(SHIFT 選考情報) |
採用大学の一覧が公開されていない会社のほうが多数です。それは隠しているという意味ではなく、そもそもその形で出していないだけのことが多い。一覧がない会社でも、募集要項の応募資格に大学名の条件が書かれていなければ、応募はできます。
もう一つ見ておくとよいのが、OB・OG訪問の扱いです。「応募者の公平を期すため、当社側でOBOG訪問の設定は行っていません」(JBS)、「OB・OGのいない大学の在学生の方々に、紹介の機会が持てないため」(大塚商会)のように、あえて行わないと書いている会社があります。先輩が一人もいない大学の学生にとっては、条件が同じになるということです。[6] [8]
応募先を広げる3つの向き
「知っている会社が少ない」という悩みは、探し方を変えると解けます。向きは3つあります。
- 向き1:同じ仕事を、別の業界で探す。人と話して提案する仕事がしたいなら、IT・通信だけでなく専門商社、建設設備、金融にも同じ形の仕事がある
- 向き2:同じ業界の、目立たない会社を見る。企業向けの製品やサービスを扱う会社は、消費者向けの広告を出さないので名前を知られていないだけで、規模が大きいことがある
- 向き3:地域から探す。全国転勤が前提でない会社は多い。地方銀行、地域の物流、地域の小売、県内中心の建設会社など、住む場所を条件にして探すと候補が絞れる
たとえば銀行を1つ調べると、地方銀行61行という数と、その多くが地元中心の勤務地であることが分かります。1社だけを見て「銀行はやめよう」と決めるのは早すぎます。まず数を知り、その中から自分の条件で絞ってください。[10]
次に読むもの
本コラムでは、業界ごとのハブ記事と、会社ごとの記事を用意しています。会社ごとの記事では、その会社が公開している募集要項・採用FAQだけを読み、確かめられることと確かめられないことを分けて書いています。
- IT・通信の業界ハブ:システム開発、通信、Webサービスの違いと、未経験からの入口
- 銀行・信用金庫の業界ハブ:銀行・信用金庫・信用組合の違いと、地元で働くという選び方
- メーカーの業界ハブ:完成品と部品、企業向けと消費者向けの違い
- 会社ごとの記事:大塚商会、ソフトバンク、SHIFT、システナ、JBS、群馬銀行、京葉銀行 ほか
会社の記事を3本読んだら、次は自分の条件を1枚に書き出してください。卒業年、住みたい場所、転勤の可否、やりたい仕事の形。この4つが決まると、4,001社を数十社まで絞り込めます。どこから手をつければいいか分からないときは、逆転就活塾の無料相談で一緒に整理することもできます。
参照した資料
大学・機関が公開する情報と、編集部による進め方の提案を分けて掲載しています。採用条件や支援の受付状況は変更されるため、利用時に公式情報をご確認ください。
- 日本取引所グループ 東証上場銘柄一覧(上場会社数はここから集計)確認日:2026-09-09 / 2026年8月31日時点の上場会社一覧(data_j.xlsx)。本コラムはここから内国株式の事業会社を抽出
- 名古屋証券取引所 上場会社検索確認日:2026-09-09 / 名証単独上場の会社一覧(2026年9月9日取得)
- 福岡証券取引所 上場会社一覧確認日:2026-09-09 / 福証上場会社141社の一覧と各社の証券コード(2026年9月9日取得)
- 札幌証券取引所 単独上場会社確認日:2026-09-09 / 札証単独上場16社(2026年9月9日現在の公式表示)
- 京葉銀行 Recruiting 採用FAQ確認日:2026-09-09 / 学部学科と出身大学の扱いについての記載
- 大塚商会 新卒採用情報 採用Q&A確認日:2026-09-09 / 学部・学科不問の記載とOB・OG訪問の方針
- システナ 新卒採用サイト(2027年卒)確認日:2026-09-09 / 選考基準の欄の記載
- JBS 日本ビジネスシステムズ 新卒採用募集要項確認日:2026-09-09 / 「先輩の出身校」の一覧とOBOG訪問の方針
- SHIFT 新卒採用サイト 選考情報確認日:2026-09-09 / 新卒一律年収の撤廃と新卒検定の測定項目
- 全国地方銀行協会 地方銀行の概要確認日:2026-09-09 / 地方銀行61行、店舗数7,866店、役職員数12万611人(2026年3月末時点)