大学院進学と就職を、別の進路として読む

東京大学の2025年度版大学概要資料編は、2025年5月1日現在の2024年度卒業者の進路を示しています。理学部卒業者319人は、大学院研究科への進学261人、他の学部等への進学3人、就職27人、その他28人です。[1]‌‌‌​‌​​​‌‌‌‌​‌‌​‌‌‌‌​‌​​​​​​‌‌​‌‌‌​​​​‌​‌‌​​​​‌​​‌​​​‌​​​‌‌‌‌​‌‌

2024年度理学部卒業者の進路
区分人数
大学院研究科への進学261人
他の学部等への進学3人
就職27人
その他28人
卒業者合計319人
[1]

大学院進学者が多いため、学部卒の就職者数だけで就職の強さや弱さは判断できません。就職希望者数が不明なまま就職率を算出したり、大学院進学261人を全員理学系研究科への進学者とみなしたりしないようにします。

「研究者を目指す人が多い」という学部の紹介と、個人が研究者になれるかどうかは別の話です。学部で就職する、修士で専門を深める、博士まで研究を続けるといった道を、それぞれの条件で考えましょう。

学科の就職先は、学部・修士・博士と集計期間を確認する

理学部のキャリア支援ページは、各学科・専攻の卒業後の進路へのリンクを掲載しています。学部と大学院の進路を別に案内しているものもあるため、自分が比較したい課程から確認することが大切です。[2]

例えば物理学科・物理学専攻の進路ページは、学部、修士、博士を分けて説明しています。学部卒業者の説明は2023〜2025年度の合計219人を対象としており、2025年度だけの実績ではありません。修士・博士の集計対象人数も別に示されています。[3]

進路資料で確認する4点(編集部の提案)
確認点読み違いを防ぐ問い
学位・課程学部卒、修士、博士のどの実績か
期間単年度か、複数年度を合わせたものか
対象者卒業・修了者全員か、回答者か、退学者も含むか
進路区分進学、就職、研究職、その他をどう分けているか

物理学専攻の博士課程の資料には、単位取得のうえで退学した人を含むとの注記もあります。大学や研究機関への進路を読む場合も、常勤職とポスドクなどを一括して終身の研究職と考えないようにしましょう。[3]

学科や研究室の企業名一覧を使う場合は、対象が学部卒だけかどうかを確かめます。大学院修了者が入社した会社の名前を、学部卒での入社実績として扱わないことが、現実的な応募先選びにつながります。

10学科の専門を、問いと方法で説明する

2026年度の理学部ガイダンスは、数学、情報科学、物理、天文、地球惑星物理、地球惑星環境、化学、生物化学、生物、生物情報科学の10学科を案内しています。以下はその学びの違いを振り返るための整理で、公式の学科区分を変更したものではありません。[4]

学科の広がりと、経験を振り返る問い(整理は編集部)
学科のまとまり専門の手掛かり自分の経験で確かめること
数学・情報科学数理や情報の基礎どの前提や手順を使って問題を考えたか
物理・天文物理現象や宇宙理論と観測・実験をどう照合したか
地球惑星物理・地球惑星環境地球・惑星・環境どんな時間・空間の範囲を扱ったか
化学・生物化学物質や生命の分子・細胞等条件や測定方法をどう設定・確認したか
生物・生物情報科学生命の多様性や情報対象の違いやデータをどう扱ったか
[4]

この表の方法を全学生が経験しているとは限りません。理論中心の研究、実験中心の研究、観測や調査を行う研究など、自分が実際に行った活動に合わせて整理してください。

就活で専門性を伝えるときは、研究テーマの難しさを示すだけでなく、どんな疑問に対し、なぜその方法を選んだかを説明します。大学名や学科名に説明を任せず、専門外の人が理解できる短い言葉を用意しましょう。

進学と学部卒就職を、希望する仕事の条件で比べる

大学院進学を考える場合は、学部で生まれた問いをどこまで深めたいかを整理します。就職を考える場合は、研究で得た経験と募集職種で求めることを比較します。どちらも、周囲に多いからという理由だけで決めないことが大切です。

進路を比べるためのメモ(編集部の提案)
観点進学を検討するとき就職を検討するとき
課題研究で何を明らかにしたいか仕事で何に取り組みたいか
条件研究室、指導体制、入試、学修計画必要な学歴・専門、担当業務、選考
経験卒業研究で残っている疑問実験・解析・共同作業で自分が担ったこと
生活学修期間、生活費、利用できる支援勤務地、勤務条件、新人教育
確認先指導教員と志望研究科募集元とキャリア支援室

研究開発、情報、金融などの仕事で必要な学歴や専門は、企業と募集区分によって違います。「理学部ならこの職種」「修士なら必ず研究開発」と一律に決めず、募集要件と選考内容を確認しましょう。

博士課程も考えている人は、学部卒の実績だけで将来を判断せず、研究領域に近い博士課程の進路資料も確認します。学位取得までの見通しや、その後の選択肢について、教員とキャリア支援の両方から情報を集めると比較しやすくなります。

研究の説明は、結果と自分の判断を分ける

自己PRでは「論理的思考力がある」「粘り強い」と結論だけを述べるより、研究や演習で実際に判断した場面を示します。想定と異なる結果や、理解できなかった点にどう取り組んだかも、振り返る対象になります。

研究・演習を説明する順序(編集部の提案)
項目準備する内容
目的何を調べ、なぜ重要だと考えたか
方法どの理論・データ・実験を用いたか
工夫疑問点をどう切り分け、確かめたか
結果現時点で確認できたこと
限界残る課題と今後の確認方法

編集部の架空の例です。「解析結果が想定と異なったため、私はすぐに結論を変えず、入力データと計算の前提を分けて確認しました。指導者に相談し、条件をそろえた比較を行いました。発表では確認できた範囲と未解決の点を分け、再検討できる形で説明しました。」

これは東京大学の学生の体験談ではありません。自分の経験へ置き換え、実施予定と実施済みの作業、研究室全体の成果と自分の貢献を区別します。共同研究先の秘密や未公開データを含めないよう、応募資料に出せる内容を指導者に確認してください。

専門外の相手向けの短い説明と、詳しい質問に答える説明を用意しておくと、研究の整理にも役立ちます。分からないことを隠すより、どこまで確かめたかを具体的に説明しましょう。

理学部のキャリア支援は、学部生も利用できる

理学系研究科・理学部のキャリア支援室は、在籍する学生とポスドクの就職・キャリア形成を支援する組織です。工学系と連携して企業研究セミナーやガイダンス、個別相談を行い、窓口は工学部2号館208号室と案内されています。[2]

支援の対象は大学院生だけではありません。学部卒で就職するか迷っている人も、希望する仕事の条件や研究の経験を整理して相談できます。最新の理工連携キャリア支援室サイトにはオンライン・対面の相談も案内されています。[2] [5]

  • 学部卒の統計と、修士・博士の統計を分けて読む。
  • 自分の学科の進路資料で、年度と対象者を確認する。
  • 進学と就職の条件を表にし、分からない点を残す。
  • 研究や演習の目的・方法・工夫・限界をまとめる。
  • 指導教員とキャリア支援室に相談し、次に調べることを決める。

就職を選ぶことも研究を続けることも、理学部での学びを振り返る機会になります。肩書きや周囲の選択に合わせるより、自分が取り組みたい課題と必要な準備を確かめて進めましょう。

参照した資料

大学・機関が公開する情報と、編集部による進め方の提案を分けて掲載しています。採用条件や支援の受付状況は変更されるため、利用時に公式情報をご確認ください。

  1. 東京大学 2025大学概要資料編 卒業後の状況確認日:2026-09-11 / PDF13/冊子11、2024年度理319院261他進3就27他28。女性内数の延べ相違や比率不使用
  2. 東京大学 理学系研究科・理学部 キャリア支援確認日:2026-09-11 / 学生ポスドク、工2号208、理工連携、課程別進路リンク。旧年度90%概数や担当者氏名不使用
  3. 東京大学 物理学科・物理学専攻 卒業生の就職先確認日:2026-09-11 / 学部2023-25計219、修331博226、博士は単位取得退学含む。HTML本文のみ、画像の個別値・企業名未使用
  4. 東京大学 2026理学部ガイダンス確認日:2026-09-11 / 現行10学科と各学科テーマ、5分類と説明問いは編集部。終了イベントを今後開催とせず
  5. 東京大学 理工連携キャリア支援室確認日:2026-09-11 / 現行オンライン対面相談。学生声は不使用

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